『神と呼ばれた男たち』 松井政就著 



 
『神と呼ばれた男たち』 第5章

 嶋崎 巌 〜THE SAMURAI〜

                                                    松井政就著

       (抜粋)

 ラスベガスの高級カジノ・ベラージオには、名うてのプロが集まるポーカールームがある。「セブンカードスタッド」のテーブルを囲む中に作務衣姿の日本人が一人いる。プレイヤーたちはこの男の一挙手一投足に注目する。ゲームは最後の場面になり、七枚目のカードが配られる。失望の表情を浮かべて降りるプレイヤー、そして更に賭け金をつり上げるプレイヤー。作務衣姿の男も静かにレイズする。
 やがて男のカードがオープンされる。予想外の結果に対戦相手は青ざめ、テーブルを後にする。そこにいる誰もが異様な雰囲気に飲まれていく。この男の登場により、“ポーカールームの顔”たちは一つの恐怖に包まれたという。いつしか男は“SAMURAI”と呼ばれるようになった。


【どん底が生み出した一つの奇跡】

 男性の名は日本人カードプレイヤー嶋崎巌。彼と対面すると「この感覚の事か」と感じるものがある。目を合わせると、まるで毒気にあてられたかのようにこちらの神経が疲労する。それが、彼が持つといわれる「氣」である。


 「氣」というものは、多くの人間がそれを感じているにも拘わらず、科学的にその存在を証明する方法はない。しかし、だからといってそうした感覚自体が存在しなくなるわけではない。いやむしろ、ラスベガスのカードプレイヤー(=プロ・ポーカープレイヤー)たちが彼を怖れるのは、こうした氣を感じ取っているからに他ならない。



 かつての恩人からこう言われた。

 「死ぬ前に、この世で地獄を見てはどうか。骨は私が拾ってやるから」


【ポーカーは博奕にあらず。分析力、判断力、そして決断力が試される知的スポーツである】

【ゴールを過ぎるまで結果は決まらない〜ポーカーの精神〜】

 人間の人生など、未来がどうなるかは絶対に見えない。レールの上を走っていると思っていても、実際にはそんなレールなど存在しない。それは、近年の日本社会に起きているパラダイムシフトが如実に証明している。安定の象徴であった大会社が傾き、ゴミでも捨てられるように社員が馘首される。その一方で、考え方次第、方法次第で幾らでも逆転できる社会になってきたことも事実なのである。


(全文は本誌にてご覧ください)


松井政就(まつい まさなり)
1966年長野県生まれ。飯田高等学校、中央大学法学部卒。宝くじ地震研究所所長。作家。作品作りの傍ら自らもカジノプレイヤーとして海外を巡る。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書)『経済特区・沖縄から日本が変わる』(光文社)『ディーラーホースを探せ』(光文社)等。

 
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