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Vol.230 横井さん
先日、かなりちゃんとした媒体からインタビューを受けたとき、
「今なにをしたいですか？」
と質問された。
急に訊かれたのでつい本心が出てしまい、
「鬼ごっこをしたい」
と答えると、女性のインタビュワーは不審げな顔をして
「どうしてですか？」と訊いてきた。
「隠れているときに、見つかりやしないかとヒヤヒヤする、あのドキドキ感がたまらないのです」
するとインタビュワーは冷たい目をした。
「今回のお仕事と関係ありませんね。しかもそれは隠れんぼです」
たぶんあのインタビューはボツだろう。
とにかくぼくのクラスでは隠れんぼが大人気で、授業中はおろか、放課後も野球そっちのけで隠れんぼをした。
隠れると言っても校舎内ではすぐに見つかるので、やがて校庭に出たり近所の家の物置に隠れる奴まで出てきて、隠れんぼはどんどん壮大になっていった。
その頃、テレビで衝撃的なニュースが出た。グァム島で２７年間も隠れていた元日本兵横井庄一さんがついに発見されたのだ。
翌朝の学校はその話で持ちきりになった。
どいつもこいつも、みな、羨望のまなざしで「横井さんはすごい！」と言っていた。
松井政就
'08.2.22
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