Vol.237 反省する男
喫茶店で原稿を書いていたら、隣のテーブルにサラリーマン風の二人の男性が来て話を始めた。 話し声がバカにでかいので否応なく内容が聞こえてきた。その内容をここに書いてもいいが、それではその会社が困るだろうからやめておくが、伝票の数字を間違えたことについて、先輩と思われる男性が若い男性をさかんにお説教していたのだ。
先輩が若い男に言った。
「営業利益が10円なんて数字になるわけないだろ。桁の間違いにすら気づかないなんて、どうかしてるぞ」
若い男は「ウィーッス」と答えた。
「何だその返事は? 反省してるのかよ」
「してますって」 若い男はそういって首を激しく左右に曲げ、骨をボキボキと音させた。
「お前職場に帰ったらまず部長に報告しなおさないと…」
そう言ったが、若い男は返事をしない。
「おい、聞いてるのか!」 先輩はもう一度言った。
若い男は頭と顎を両手でおさえ、頭を無理矢理回して首の骨をボキボキ!と音させ、「聞いてますって」と言った。
たぶん、聞いてないだろうと、ぼくは思った。
松井政就
'08.3.14
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