Vol.251 浅草場外馬券売り場 〜沈黙の大応援団と謎のガイジン〜
空は快晴なのに、浅草六区には霧のような雨が落ちていた。
「浅草場外馬券売場」、別名浅草ウインズ2階では、見たことのない手ぬぐいを被ったオジサン3人が、アサクサキングスの馬券を握って興奮していた。
彼らは昨年の菊花賞でアサクサキングスのおかげで随分儲かったらしく、今回の天皇賞では、仲良しの3人で浅草の場外までわざわざ応援に来たと、頼みもしないのに教えてくれた。
”わざわざ”と言うからには、さぞかし遠方から来たかと思いきや、家は本所だという。 歩いて10分の地元である。しかし普段は電話投票だから、場外に来ただけでも力の入れようが違うとのこと。
それはさておき、ぼくもアサクサキングスから狙っていると言うと黄色い歯を見せて握手をされた。
手がネバネバした。
後で便所で洗っておこうと思っているうちに天皇賞はスタートした。
レースが最後の直線に向き、アサクサキングスが抜け出そうとすると、オジサンたちは、それ!行け!とやかましく吠えた。しかし無情にもアドマイヤジュピタとメイショウサムソンにあっさり交わされ無念の3着。結果はそのまま2頭で決着。
オジサンはすっかり静まり返り、しかめっ面をした。
その横で、半ズボンのガイジン4人がガッツポーズをし、どういうわけか知らないが、日本語で「ヤキニク! ヤキニク!」と奇声をあげていた。
松井政就
'08.5.4
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