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Vol.252 どっこい北京 〜(3)分からなさを楽しむ〜
香港はもちろんマカオではも比較的英語が通じるが、北京ではホテルやレストランを除き、まず通じないと思っていたほうが良い。特にタクシーの運転手に英語が通じないのは立ち往生の原因だ。
(ポピュラーな3輪タクシー)
そこで2つの対策を用意していた。
第一の対策は「地図」だ。
ホテルでもらったカード(=名刺)の裏に地図があるので、それを見せればすんなり運んでくれると思いきや、見せるとこう言われた。
「この地図は間違っている」
名刺裏の地図は、いわゆるデザインされた地図で、地形の通りではない。丸くない山手線を円に描くアレである。その地図を指して、こんな場所はない、という内容のことを言われてしまった。
そこで第二の対策、「筆談」をした。
このホテルに行きたいという内容を、漢字で書いて見せたところ、運転手はその文章をきれいな発音で読み上げた。もういちどぼくは、その文章を指さして、そこに行ってくれるように頼むと、運転手はもういちど、その文章を更に大きな声で読み上げた。真似してオウム返しすると、「そうじゃない、こう言うんだ」といった感じで、ゆっくりと大きな声で、読み方を教えてくれた。
そうじゃない、と言いたいのはぼくのほうだ。
読み方を教えて欲しいんじゃない。そこに行けと頼んでいるのだ。
仕方ないので、別の文章を書いて、それを指先でトントンと指してみると、恐れていた通り、自慢げにその文章を流ちょうな中国語で発音された。
かくしてタクシーの中で中国語講座を受けながら、夜は更けて行くのであった。
つづく
松井政就
'08.5.8
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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