Vol.263 羨望のまなざし 〜職場会の女性〜
仕事を終え、おやつを食べに喫茶店に入ると、隣のテーブルには女性が数人でお茶を飲んでいた。 話の内容から、昔の職場の仲間のようである。話題は保険や詐欺から、夫の話に移っていった。
A子が髪を指でとかしながら、「B子の旦那、課長になったんでしょ? 贅沢できていいわねえ」
B子は鼻にシワを寄せ、「それが違うのよ。係長の時より給料下がったのよ。残業代が出ないんだって。あったま来ちゃうわ」
「だったら残業しないで早く帰ってきてくれるじゃない」
「あんなの早く帰ってこられても困るわよ。それよりA子の旦那、警察官でしょ? いいわよねえ。 変な押し売りが来たら逮捕してくれそうじゃない」
「と思うでしょ? でも、やたらに逮捕できないんだって」
当たり前じゃないかと、つい、横やりを入れたくなったのをぐっと堪え、続きに耳を傾けた。
「ねえ、旦那って山さんみたいなタイプ?」と、B子は目を輝かせた。
「どっちかと言えばボスみたいな感じかな」
その会話で彼女らの世代が判明した。仲間に入れてもらいたいと思ったが、必死で我慢し、羨望のまなざしを向けるしかなかった。
松井政就
'08.6.29
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