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Vol.273 遭難 〜大都会でミイラは発見されるか?〜
猛暑何するものぞと、エアコンなしでこの夏を乗り切れるかどうかを試してみた。寝る間はもちろんのこと、仕事をしている日中も一切エアコンを使わず、扇風機と団扇だけで過ごしてみた。
近くのビルの巨大温度計が37度を示していたその日、汗だくになりながらパソコンに向かっていたが、いつしか砂漠で倒れるシンドバッドの夢を見ていた。目を覚ますと、椅子からズリ落ち床に寝そべっていた。
気を失っていたのである。
顔は火照り、頭は痛く、ノドは乾燥し、足の指先がしびれて膝もガクガクしていた。おまけに体じゅうが焦げ臭かった。慌てて冷蔵庫に走り、麦茶を飲み、フリーザーから取り出したアイスノンを頭に巻き付けた。
まさに自分の家で遭難しかけたのである。
あのまま目を覚まさなければ、窓から差し込む恐怖の大王に焼かれ、都会の真ん中でミイラになっていたことだろう。
ちなみに近くの巨大温度計はその翌日の集中豪雨の最中、黄色い稲妻に直撃されて故障した。今は温度計が取り外され、ポッカリ空いた四角い穴から向こうの空が見えている。
松井政就
'08.8.6
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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