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Vol.278 天才少年 マカオの光景(4)
カジノの街と言えど、まわりには地元の人が暮らす街。
休日に地元の人がいく食堂でラーメンを食べていたら、ぼくのいるテーブルに地元の少年二人が座った。
赤いサイコロの絵の手ぬぐいを被ってラーメンをすするぼくを、少年は不思議そうに見ていたと思ったら、メガネをかけたおかっぱ頭の少年が、
「Are you Japanese?」
と英語で質問してきた。かなりきれいな英語である。
(以下、会話は日本語訳)
「そうだよ、よくわかるね」
「うん、いっぱい来るからね」
「それにしても上手な英語だ。いつから習っているの?」
「5歳だよ」
「大したもんだね。そんなに上手なら将来はどんな仕事でも出来るよ。何になりたいの?」
「おまわりさんだよ!」
細くて青白い顔からは想像もつかない返事だ。
「なぜおまわりさんになりたいの?」
「男らしいからさ! それにこれからは外国人もたくさん来るから英語は大事なんだ」
そう言って少年は目を輝かせた。
すると、それまで黙っていたもう一人の少年が言った。
「ぼくは日本が好きなんだ」
これまたきれいな発音だ。ぼくよりずっと上手だ。
「へえ〜。どこが好きなの?」
「相撲さ。ぼく、相撲が大好きなんだ」
しかし見るからに細くて小さな体である。一抹の不安を感じた。
「じゃあ、相撲取りになりたいのかい?」
「違うよ。ぼくは体が小さいから無理さ。ぼくがなりたいのは土俵で相撲のレフェリーをする人さ」
行司の事である。
二人の少年は実に深いと思った。
松井政就
'08.9.19
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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