Vol.283 新型プラスマテレビ 〜いったい何の店か?〜
プラズマテレビを見たいと思い、ある電器店に入っていったら、真っ昼間だったせいか客もほとんどおらず、すぐに女性店員が近づいてきた。
「何をお探しですか?」
見ると、来た場所を間違えたと思うほどの美人である。耐え難い色気をほとばしらせながら体を横付けされた。
彼女の香水が鼻に届いた。
プラズマテレビの事など、急にどうでもよくなった。
でも一応、「プラズマを見に来たんです」と言うと、
「大きさはどれくらいがご希望ですか?」
そういって上目遣いされ、思わず、Dカップがいいですと口走りそうになり、心の中で自分で自分にビンタした。
彼女に店の奥に連れていかれ、「こちらが新型のプラズマテレビです。10月に出たばかりです」
テレビの前に立つと、彼女はぼくの隣にピタリとくっついて話しはじめた。たしかにテレビの説明もあったが、途中からなぜか近所の話になり、それから旅行の話も出るなど気づけば30分以上が経過していた。
悪いと思い、時間を取ってしまったことを謝って帰ろうとしたら、
「まだいいじゃないですか、他に誰もいないですし」
本人がいいと言うのだからいいのだろう。
その後も、彼女の話に同意すると「きゃー」と言われ、反論すると「えー」と言われ、プラズマテレビとは何の関係もない話が30分ほど続いた。
ついに色気と香水でヘロヘロにされた頃、「また来てください」と言われ、手を握られて店を後にした。
プラズマテレビのことなど、ますます、どうでもよくなった。
松井政就
'08.10.9
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