Vol.291 ウオッカVSスカーレット歴史的死闘 〜これが最後の対決かもしれない〜
一日たった今でもなお、大歓声に体が包まれている気がする。
安藤勝己も武豊もウイニングランをしない。ターフビジョンは二人を交互に映し出している。その時武豊が苦笑いをしながら首をかしげる様子が大きく映し出された。ぼくはふと、スペシャルウィークとグラスワンダーの有馬記念を思い出した。
あの日、首の上げ下げを制したと確信してウイニングランをした武豊。しかしスタンド前に戻って来た時電光掲示板にグラスワンダー1着が表示された。あの日とは逆に、武豊は今回、ウオッカを2着の引き上げ所に止めた。
ターフビジョンでは天皇賞のスローが繰り返され、ゴール手前もゴール過ぎも、スカーレットの鼻が出ているように見えていた。あの有馬記念とおんなじだ。しかし長い長い写真判定の後、ウオッカの14番が表示されるとスタンドが揺れるほどの歓声が沸き起こった。歴史的死闘に決着がついた瞬間だった。
勝負事だからどちらかが勝ち、どちらかが負ける。
勝ったウオッカはもちろん素晴らしい。しかしダイワスカーレットのほうが弱いと思った人はいないはずだ。直線で一旦2頭に交わされて3位に後退しかけながら、再び差し返しての2cm差。化け物に他ならない。
天皇賞の決着はついたものの、ウオッカとダイワスカーレットの決着はまだ付いていない。
でも、それでいいじゃないかとぼくは思う。2頭がゴール板を過ぎた時、「2頭の対決はこれが最後かもしれない」と不意に思ったのである。
ところで昨日の結果について、ぼくには一つわからないことがあった。
かつて2cmという着差で1,2着を決めた例はあっただろうか? これまで同着は数え切れないほどあるが、それらが全て1mmも違わない着差だったとは到底思われない。この着差は本来であれば同着のはずだ。それなぜ今回だけ2cmという誤差のような差まで出して同着を避けたのか?
レース後、ある関係者に訊いたところ、
「天皇盾が一つしか無いから、天皇賞だけは同着に出来ないのです」
目からウロコが落ちるようだった。
松井政就
'08.11.3
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