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Vol.300 仕事で失敗をした課長 〜成人病を治すための言い訳とは?〜
糖尿病の課長が一大決心をし朝飯を食べるのをやめた。むろん、たんに朝飯を止めるというのではなく、ぼくがやっていたのを真似して、リンゴとニンジンをジュースにして飲むことにしたのである。<Vol.290><Vol.238>
しかし小学生の子供がいる彼の家では、子供にちゃんと朝ご飯を食べさせるのが一苦労で、父親が朝ご飯を食べないのでは示しがつかないというのが難点であった。「お父さんだって食べないじゃないか」と言われれば返す言葉がないからだ。
「自分は食べず、子供には食べさせるためにはどうしたらいいか?」と助けを求められ、ぼくは一計を案じた。
「お父さんは仕事で失敗した罰で、朝飯を抜かれてしまっているんだ」
と、説明させることにしたのだ。
さっそく試してみたという。朝飯をイヤイヤ食べる息子の前で課長がジュースを飲んでいると、案の定息子が訊いた。
「どうしてお父さんは食べないの?」
「お父さんはね、仕事で失敗したから、朝ご飯抜きなんだ」
「ふうん。かわいそう」
作戦は成功だ。
翌朝も同じ手を使った。
その翌朝も同じ手を使った。
そのまた翌朝も同じ手でいこうとジュースを飲んでいると、息子が起きてきて悲しそうな顔でこう訊いた。
「お父さん、また仕事で失敗したの?」
松井政就
'08.11.26
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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