Vol.301 浅田真央が見せた「戦うとはどういうことか」
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彼女が初めてシニアの舞台に立った時、「ダイヤの原石」だと誰もが思ったことだろう。3年前、浅田真央はまさにそんな登場の仕方をした。もっと磨け、もっと光れと世界は求め、人々は期待を膨らませた。 しかしダイヤの原石はいつしか、触れば壊れてしまいそうなほど繊細になっていった。天真爛漫な笑顔を時々曇らす憂いは、彼女にかかる重圧を何よりも物語っていた。 バンクーバーまであと一年。苦しんだ彼女が出した結論は、世界女王のプライドにこだわらぬ新たな自分への挑戦だった。 厳しさは想像を超えていた。フランス杯でのまさかの敗戦に彼女は顔を強ばらせた。しかし自分への挑戦を決めた彼女の心は、そんなことでは折れなかった。 迎えたNHK杯。不安げながらも納得のいく演技をしたショートから一夜明けたフリープログラム。ダイヤの原石はついに新しい光を放ち始めた。 二度のトリプルアクセルだけではない。息を飲むようなステップとリズム。スタンディングオベーションの中には、「今でしか出来ないことに果敢にチャレンジした」彼女の姿があった。戦うとはどういうことなのかを身をもって教えてくれたのだ。 浅田真央の本当の力はまだまだこんなものではない。これはほんの序章にすぎない。まだ誰も見たことのない本当の浅田真央が、いよいよ姿を見せようとしているのだ。 真央さん、優勝おめでとう! '08.11.29 |