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Vol.308 待ちこがれた存在感 〜帰ってきた朝青龍〜
朝青龍が出場することになり、たまらず初場所に駆けつけた。両国場所はよほどの用事がないかぎり毎回見に行くのだが、ことに今場所は朝青龍が再起を懸けるとあっては見逃すわけにはいかない。
しかし稽古総見での内容が悪かったり、左肘がまだ治っていないことなど不安が囁かれる中での出場だ。
結び前の一番、いよいよ朝青龍が土俵に上がった。すると、それまでたるんでいた場内の空気が一気にピンと張りつめた。名横綱はこれまでにもいたけれど、登場しただけでこれほどまでに土俵の空気を変える横綱も少ない。
大歓声の中、朝青龍は大方の予想を覆して難敵稀勢の里を下し、復活への第一歩を記した。その雄姿に満員の観衆は長い喝采を送った。それは結びの力士が土俵に上がってもやまなかった。
何かとお騒がせな横綱だ。しかし身銭を切って場所まで見に来るお客さんは知っている。こんなに絵になる個性的な横綱は他にいないということを。
辛口で知られるNHK解説者の北の富士勝昭氏も「土俵に上がっただけでこれほど空気を変える横綱はいない」と完全に白旗を揚げた。
この存在感が朝青龍だ。
松井政就
'09.1.13
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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