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Vol.316 資産家の男
先週から競馬が当たらない。
根岸ステークスの800倍が当たって以来、2週間も美酒から遠ざかっている。ぼくの予想で800倍を当てた読者からも「早く次の夢を見させてください」とメールが来る。その気持ちはぼくだって同じだ。
大関になって連敗街道まっしぐらだった日馬富士関(元・安馬)の気持ちがわかる。
今年になって競馬貯金がグングン増えたのでホンダの新型「インサイト」を買おうかと思っていたが、このままじゃミヤタの自転車に変更だ。 しかし、ここでスタイルを変えてはいけない。今までも何度となく窮地をしのいできたのだ。きっと何とかなるだろう。
週末、知り合いの自称資産家の男から食事に誘われた。
「最近、いいアイデアが浮かばない」と彼は言った。
「前からそうじゃないか」
つい本音が出てしまった。
彼は口を麻生総理のように曲げ、
「儲かる話はないか?」
と、頭を抱えた。
彼は昨年後半から投資に失敗し、エライ目に遭っている。株も信託も為替も全敗で資産半減どころではないらしい。それでもなお、血眼になって儲かりそうな株を探しているという。
「その金を全部ぼくが預かってやろう」
「増やしてくれるのか?」
「いいや。保管料を2割くれれば、1年後に残りの8割を返してやる」
「どういう意味だ?」
「だって、見ず知らずの証券マンや銀行員の給料にされた上で資産半減よりはずっとマシだろう。8割も戻ってくるんだぞ」
何を思ったか、資産家の男はポン!と膝を叩いていた。
松井政就
'09.2.15
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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