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Vol.330 下町のビル・ゲイツ
国技館で相撲を見ていたら、会社をやめた元課長から電話がきて、浅草にいるからメシを食わないかと誘われた。
ならば××屋という焼き肉屋で待ち合わせしようと言うと、場所がわからないという。どこなら(待ち合わせ場所として)わかるかと尋ねると、浅草寺なら知っているという。
そんな場所じゃむしろ見つかりにくい。
ぼくはふざけて「ロック座の入り口で待ち合わせよう」と答えた。
約束の時間に到着すると、元課長は青い顔をして、本当にロック座の入り口で待っていた。ストリップ小屋とは知らなかったそうで、こんなに恥ずかしい思いをしたのははじめてだと言った。
マジメな人をからかって悪いことをしたと反省しながら、目当ての焼き肉屋に来てみると、何と臨時休業。 仕方がないので、通りにあった居酒屋に入ることにした。
ぼくらの隣のテーブルでは、仕事上がりのOL二人がホッピー片手に既に出来上がっていて、その隣のテーブルにいた白人男性客たちに流ちょうな英語で話しかけていた。
白人男性のうちの二人は、OLからお酌をされたり、ホッピーとビールの違いを説明されたりと愛想良くしてもらっていたが、残る一人は「ビル・ゲイツに似ている」というだけの理由で仲間はずれにされていた。
松井政就
'09.5.15
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。阿智中学校早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。
http://tjklab.jp/ |
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