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Vol.338 店員はツライよ 〜客の顔をしたクレーマー〜
携帯電話の変更手続きをしに、東京駅近くの正規代理店に行った。
その店は、受付の人が手際がいいのでいつも利用しているのだが、順番を待っていると窓口から中年女性の怒鳴り声が聞こえた。全身真っ赤なスーツの女性だ。
携帯会社は、毎月のようにタダで機種交換されてはたまらないから、一度購入したら、その電話機をある程度の期間は使用してくれるように、「縛り」を設けている。
「そんな条件は受け入れられない! 不当な強制だ」
と、そのオバサンは声を張り上げた。
電話機代を最初に全部払えばそんな縛りはないことを店員は説明したが、彼女は「電話機はタダにしろ」「いつでも契約解除させろ」と譲らない。
要するに、クレーマーだ。
文句は続き、
「使い方がわからない」
「ダウンロードって表示がどうして日本語じゃないのか」
「サーバーって何か説明しなさい」
「あんたはどこの学校を出たのか」
「ここの給料は幾らなのか」
「あなたの携帯をいじらせなさい」
「契約してほしいなら誠意を見せなさい」
「●×&%$#」
と、止まる気配がない。
ぼくの順番が来たので手続きを済ませ、店を出て行こうとすると、半泣きの店員に向かって、女が「もう一度最初から説明しなさい!」と言うのが聞こえ、あやうく足を捻挫するところだった。
その後友達とお茶を飲み、買い物を終えて再び店の前を通ると、窓口にはまだ真っ赤なスーツが座っていた。 あれから何と3時間半も経過していた。
松井政就
'09,7.6
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松井政就(まつい・まさなり) 作家。阿智中学校早退。主な作品『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書)『賭けに勝つ人
嵌(はま)る人』(集英社新書) 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 『経済特区・沖縄から日本が変わる』 『ディーラーホースを探せ』(光文社) 『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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