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Vol.344 命の飴はどこに売っている? 〜ミドリ安全『塩熱飴』〜
会社で部下に八つ当たりすることを生き甲斐にしている友達が、肝心の部下が夏休みですっかり気が抜けてしまい、自分も夏休みを取ったらしく、「運動不足解消のためウォーキングをしたいから付き合ってくれ」と電話が来た。
普段なら断るのだが、ちょうど電話をもらった時が朝飯を食べ過ぎてタヌキの腹のようになっていたので、うっか付き合うと返事してしまった。
そのことで命を落としそうになるとは思わなかった。
秋葉原から出発し、京浜東北線に沿って歩いていくと、上野を過ぎた辺りから早くも灼熱の太陽が照りつけ始め、汗がダラダラ流れてきた。
ぼくは去年2回、今年1回すでに熱中症になっている。 汗と一緒に塩分が流れてしまっては、また命に関わり大変だ。水やウーロン茶ばかりでは危ない。塩分の補給が重要なのだ。
すると友達が言った。
「相撲取りが宣伝している『塩熱飴』を買おう。ほら、鉄工所のおっさんたちが塩を食わされるやつだ」
「よし、買いに行こう!」
ぼくたちはウォーキングの沿道のコンビニやドラッグストアを片っ端から見ていった。ところがどの店でも「そんな飴は知りません」という。
ぼくらはめげずに店を巡った。ウォーキングをしに来たのか、「塩熱飴」を探しに来たのかわからなくなったが、途中からは意地になり、見つかるまで探そうということになった。
ぼくらは王子を越え、赤羽を過ぎ、荒川大橋を渡って川口まで達し、途中に実に興味をそそられる街があることも思い出さぬよう、「塩熱飴」をもとめてさまよった。 頭がボーっとして、全身が熱く、だるくなってきた。 足も棒のようになっていた。 そして夜の7時を回ろうとする頃、ついに浦和にまで達した。
塩熱飴は見つからなかった。
悲しかった。
「こんなバカなことあるか! あんなにCMやっているのにどうして売ってないんだ?!」
友達は怒ってしまった。
結局、帰宅後にメーカー(ミドリ安全)のホームページで注文した。
それが今日届いた。
<ミドリ安全のマークが右肩に付いている>
食べてみたらしょっぱくておいしい。
これで今年の夏はもう大丈夫だ。
松井政就
'09,8.12
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県下伊那郡阿智村立会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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