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Vol.346 炎天下でエンジンを冷やす 〜峠で動かなくなった名車〜
友人の、どいなか(土井中)君に誘われ、一緒に里帰りした。
いつもは電車かバスなのだが、新しい車に買い換えたから乗せていってくれるという。そりゃありがたいと、乗っけてもらった。
車はドイツの某名車。
「やっぱり安定している」
「この革張りのシートは座り心地が最高だ」
「飛行機のようだ」
満悦で旅が進んでいると、大渋滞に差し掛かり、車は歩くようなスピードになった。 その時であった。
「あれ?」 どいなか君が首を捻った。「エンジン温度が急上昇だ!」
「どれ?」
見ると、温度メーターがレッドゾーンになり、やがて針が振り切れ、赤いランプがピカーっと点灯した。
「オーバーヒートだ」
「何てこった」
名車は中央高速の峠で止まってしまった。
ぼくたちは道路事務所に駆け込み、水道を借り、水を汲んでエンジンにかけまくった。
炎天下だ。汗が滝のように流れてくる。びしょびしょだ。それでもエンジンを冷やさなきゃならない。 頭がクラクラしてきた。 なんだか体調が変になってきた。
「これじゃ熱中症になってしまうな」
「死ぬかもしれんぞ」
その時、ある物を買ったばかりだったことを思い出した。ミドリ十字の『塩熱飴』だ。ぼくたちは一つずつ頬張り、エンジンを冷やすために汲んできた水をガブ飲みした。
車は直らなかったが、体調は治った。
松井政就
'09,8.18
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県下伊那郡阿智村立会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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