|
Vol.363 気の毒な正義の味方
糖尿病の部長から、また急に電話がきて「一緒にメシを食おう」と言われた。浮気がバレてから家では針のムシロらしいが、かといって、彼女ともメシを食う気がしないという。
最近世間を恐怖に陥れている「睡眠薬昏睡殺人34歳女」の事件が決して他人事ではないと、心底怖れているからだ。
というわけで二人で食堂に入り、カツ丼を食べ始めたところ、若者が携帯でしゃべり始めた。結構長い。うるさいなと思っていると、近くで食べていたオジサンが注意した。
「食堂で電話なんか出るんじゃねえ! うるせえだろ」
いつ誰に殺されるかわからないこのご時世に、なかなかやるじゃないか、と感心した。
すると若者は応酬した。
「しょうがねえだろ。掛かってきたんだ」
「掛かってきたって出なきゃいいだろ。うるせえんだ」
「オッサンのほうがうるせえよ」
「何だと〜」
オジサンのほうが圧倒的に正論なのだが、店員が割って入って、どういうわけかオジサンを注意した。
オジサンは激怒し、捨て台詞を残して店を出て行ったが、帽子を忘れていってしまった。
松井政就
'09.11.7
|
|
松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
|
|
|