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Vol.376 金杯 〜当たらないとくれないお年玉〜
また新しい一年が始まった。
一年のはじまりは元旦だと言う人がいるが、スキーヤーにとって一年の始まりは初スキー。今年は白馬に行くことになった。
<到着すると超のつく豪雪>
<車もすっかり観念した様子>
普通はここから、いざスキーとなるのだが、ぼくは去年の秋に足を怪我したので今回は見ているだけ。小説を持ってリフトに乗った。ゲレンデの上に到着し、「足下に気をつけてください」の声とともに、降りるように係員に促された。
「ぼくはこのまま乗って下まで行くよ」
「降りないんですか?」
「うん。リフトに乗りに来たんだ」
「?」係員は首をかしげた。
そのままぼくは下っていった。厚着をしているので寒さ対策は万全。読書には最適だ。余計な雑音もないし、周囲は真っ白ですがすがしい。どんどんページが進んでいく。
ゲレンデ下の乗り場に戻ると、再び「足下に気をつけてください」の声。「ぼくはこのまま乗って上にいくよ」と言うと、今度の係員も首を傾げた。
「ぼくはスキーできないから、リフトに乗って読書してるんだ」
「何を読んでるんですか?」
ぼくが『賭博者』を見せると、若い係員はニヤリとした。「ドストエフスキーですね」
ぼくを乗せたリフトは再びゲレンデの上に上っていった。
ところで賭博者として新年を意識するのは、何といっても『金杯』だ。毎年、これは堅いだろうという馬はすっかり消えて、正月早々、誰か知らない人にお年玉が出ている。
常識にとらわれていたら勝てないぞとJRAは教えたいのか、穴を出すのは高齢馬と重ハンデ馬。そして勝っているのに人気のない馬。今年も数頭が出てきている。
このところお年玉をやるばかりで誰もくれないので、自分でJRAから無理矢理もらうしかない。
今年もよろしくお願いします。
松井政就
'10, 1, 5
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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