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Vol.380 給料以上の女 〜東京駅地下食堂〜
仕事の帰りに東京駅地下の食堂でしょうが焼き定食を食べていると、周囲から、「検察が……」「いや、小沢は……」という声がザワザワっと聞こえてきた。満員に近い食堂では、民主党の小沢一郎幹事長に関する報道が一面を飾る夕刊紙を、おじさんたちが食い入るように読んでいた。
そんな中、ひときわ目立つ声が聞こえた。
「あなたに小沢さんを批難する資格はないと思う」
女性の声だ。ぼくの中の野次馬がただちにゲートイン。声の方向を見ると、かなりの美人が、向かい合って食事中の連れのおじさんに鋭い目を向けていた。
「不正は許せないというけど、あなただって賭け麻雀してるじゃない。不正というのならあなただって同じよ」
夕刊紙に顔を埋めていたおじさんたちが一斉に顔をあげた。
「他の政治家だって同じようなことやってるのよ。なのに、小沢さんだけ捕まえるなんて、賭け麻雀がバレた人が運が悪いっていうのと同じじゃない。わたしがバラせば、あなただって捕まるのよ」
「おい、大きな声出すなよ」 連れのおじさんは、「まあまあ」といった感じでとりなしながら、小声で何事かをささやいた。
すると、どういう話の展開か知らないが、とにかく女性は更に大きな声でこう言った。
「わたし、給料以上の女ですよ！」
食堂じゅうのおじさんが、再びさっと彼女に目を向けた。それらは赤く充血していた。
松井政就
'10, 1, 26
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松井政就（まつい・まさなり）
作家。長野県会地小学校早退。
主な作品：
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』（講談社プラスアルファ新書） ★『賭けに勝つ人 嵌（はま）る人』（集英社新書） ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ１億円以上！なぜ？』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』（以上、光文社） ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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