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松井政就の週刊日記 『よく遊び よく賭けろ』

Vol. 386. 浅田真央悔しい銀メダル 夢の続きをともに戦いたい

バンクーバーオリンピック現地レポート(4) 
女子シングル フリー〜

 女子シングルが決着した。

 金メダルは韓国のキムヨナ選手。
 浅田真央選手は銀メダルを獲得した。

 オリンピックの銀メダルが素晴らしい偉業であるにもかかわらず、どうしてこんなに悲しいのだろうか。

 それはたぶん、真央さんを応援してきたのは、彼女の演技の素晴らしさが好きなだけでなく、浅田真央という一人の人間の生き様に魅了されてきたからだろう。
 そんな自分が彼女の戦いにおいて何もしてあげられなかったという無力感が辛くてならないのだ。
 


<表彰式の後、日の丸を持って応援団のところに来てくれた真央さん。涙の跡が、いかに彼女が命がけで戦ったかを物語っていた>
日の丸を持って挨拶に来てくれた真央さん


 コーチの問題、プログラムの問題、採点方式の変更の問題など、この数年間、真央さんには様々な問題が降りかかった。世間やマスコミでは無責任な意見が飛び交い、戦っている真央さん本人とは別のところで火花が散ったりしたこともあった。

 
しかし真央さんは、自分が置かれた状況に不満一つ漏らさず、目の前の一つ一つの課題をひたむきに克服していった。

 韓国が国を挙げて、はしたないまでに冬期五輪誘致のためのロビー活動をする中、真央さんは最後まで自分の演技を磨く王道で戦った。

 プルシェンコが銀とされ、カナダの英雄エルヴィス・ストイコが批判するほどの恣意的ジャッジの条件のもと、真央さんは一度もジャッジに対する不満は言わなかった。

 フリーの演技終了後、結果が出て、キス・アンド・クライを下りて行く時、真央さんの目から大粒の涙がこぼれ落ちるのを見てぼくは思った。

 
日本人は、真央さんの姿から、学ぶべきことがたくさんある。

 今、不況下の日本では多くの人間が不安を抱えて生きており、自分の人生が思うように行かないことの理由を、社会や他人のせいにする人が後を絶たない。
 思うようにいかない時、苦しい時、社会や他人のせいにしないで、自分に出来ることをとにかく精一杯やり遂げる。自分なりに一生懸命戦ってみる。
 その結果、必ずしも夢が達成できなかったとしても、戦い終わった時には、その夢の続きが見えてくるのではないか。
 涙をこぼしながらも、真央さんにはそれがはっきりと見えたように思う。

 ぼくたちは真央さんには何もしてあげられない。
 遠くから応援することしか出来ない。

 しかし彼女の夢の続きに向かって一緒に戦うことが、この何年間も、浅田真央という一人の人間によって数え切れないほどの幸せを与えてもらった者がしてあげられる、たった一つの恩返しだろうと思う。


松井政就
 '10, 2. 25(バンクーバー)

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