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Vol.387 謎のバス乗客 〜バンクーバーで見た光景〜
バンクーバーから帰国し、やっと日本の生活のリズムに戻ることが出来た。
ところで、バンクーバーにはヘンな人もいた。
ぼくは会場と宿とをバスで行き来していたのだが、帰るのはいつもかなり遅い時間だった。毎晩、路線バスに40分ほど揺られていたのだが、2〜3日たつうちに、乗り合わせる客が、大体いつも同じ顔ぶれであることに気づいた。
まずはこの男。(隠し撮りなので画像は悪い)
すごい肉体を誇示したいのか、冬のバンクーバーだというのに、いつもランニング一枚で乗っていた。しかも彼は乗りながら必ず何かを食べていた。この日はうどんのような麺類を食べ、コカコーラをガブ飲みしていた。 しかし、全くゲップをしない。よほど、ノドか胃が強いのだろう。
近くには、男性のような低い声の女性と、まるで小鳥がさえずるような声の男性が、今日食べたものについて話し合っていた。
前の日もそうだった。話の内容から、二人は近くに住んでいるようだが、なぜか並んで座ることがなく、いつも向かい合っていつも話をしていた。
しかし、一番だったのは次の人。
ぼくの斜め前には、ランディ・ジョンソンのような顔をしたおじさんが、毎日、数独(英語で「SUDOKU」)をしていた。
日本の電車の中にも、数独に熱心なおじさんはいるが、このランディ・ジョンソンのようなおじさんはひと味違った。ものすごい音をたてて、鼻水をすすりながら数独をしているのだ。その音は実に気になった。
ああ、もう少しで鼻水が……と思うと、ズズズとすすり、数独に熱中していると、また、あわや鼻水が……の繰り返し。
見ていると、ついにおじさんはポケットから白いものを出したので、ティッシュかハンカチかと思いきや、「マスク」。それを広げて「チーン」と鼻をかんだ後、何とそのマスクを口にかけてしまったのだった。
そんなことがあり得ることを、ぼくは初めて知った。
宿泊先につくと、宿泊客たちが夕食の最中。
「さっき、バスの中ですごいものを見たよ」
どんなものか聞きたいというので、さっそく話すと、「メシがまずくなった」と、嫌な顔をされた。
松井政就
'10, 3. 5
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県阿智村会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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