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Vol.393 戦略的な小学生 〜北風のレストラン〜
打ち合わせが終わった夕方、外が寒くなったので、公園のレストランに入ってお茶を飲んでいた。すると自動ドアが開き、寒い風がビューっと入ってきた。
お客さんが来たのだと思ってそっちを見ると、たんにドアが開いているだけ。その、開きっぱなしの自動ドアから、北風がビュービューと吹き込んでいた。
どうして閉まらないんだと見てみると、ドアセンサーの下に小学生が立って、ニヤニヤしていた。
ドア付近に座っていたおじさんが言った。
「そこに立っているとドアが閉まらない。寒いからどきなさい」
小学生は去り、ドアが閉まった。
ところがその数秒後、また、寒い風がビューと入ってきた。見ると、さっきとは違う小学生がセンサーの下に立っていた。
ドア付近のオジサンは、再び言った。
「そこに立つと寒いからどきなさい」
小学生はどいたのだが、すぐに別の小学生が来た。ところがその子はセンサーの下には立たずに、センサーが反応したらすぐに逃げ、自動ドアは無駄に開きっぱなしになった。
寒い風がビューと入り込んできた。オジサンはイライラし始め、ごはんそっちのけで目を光らせた。この先どうなるかと、ぼくは興味津々となった。
するとまたドアが開き、寒い風がビュー。
みんながそっちを見ると、フツーのオジサンが入ってきた。ただのお客さんだ。周囲には、「なあんだ」という雰囲気が生まれたが、その後ろで、ドアが開きっぱなしになっている。
もしや……? と思って見ると、やはり小学生が立って、ニヤニヤしていた。
オジサンが立ち上がり、「ばかやろう! 寒いじゃないか」と怒鳴ると、子供たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
ぼくはそういうのが好きなので、他の人に気づかれぬようさんざん笑わせてもらった。
お茶を飲み終わってレストランを出ると、植え込みの近くに3人の小学生が集まり、
「俺たちには戦略があるんだ」
と言っていた。
松井政就
'10, 3. 29
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県阿智村会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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