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Vol.411 おせっかい
コラムの.402号に「ゼッタイに潰れないお店」として、代官山でたまたま立ち寄った鞄屋の話を書いた。そこの女性店員が、ぼくの提げていた鞄を丁寧に手入れしてくれた話だ。
その話を友人にしたところ、
「ずいぶんおせっかいな店員だ」
と言われたが、そうでもない。なぜなら、そのサービスを受けてしまったぼくに、結果的に鞄を買わせるのに成功しているからだ。
彼女にそうした下心があったかどうかはわからないが、世の中には色んなおせっかいがいる。
G1の日のウインズで、あるオジサンが、別の男から、さかんに「4番を買え」と奨められていた。
「オレの好きなように買わせろよ」
「悪いこたぁ〜言わねえ。4番を買え! 絶対に来るから」
「うるさいなー。オレは13番から買いたいんだよ」
「ひとが親切に教えてやってるのに、どうして素直に聞かないんだ?」
「あんた、誰なんだ? おせっかいだよ!」
男はコーチ屋で、もし4番を買わせて的中したら、分け前を取ろうという魂胆なのだ。そんな下心ありありのおせっかいというわけだ。
以前のことだが、乗っていたポンコツ自転車がパンクし、近所の自転車屋で直してもらったことがあった。
その日の晩のこと。玄関のチャイムが鳴ったので表に出ると、その自転車屋が立っていた。
「お安くしときますよ」 脇には新品の自転車を持ってきていた。「あんな古い自転車に乗っていると事故起こしますから、新しいのに買い換えたほうがいいですよ」
頼みもしないのに、新しい自転車を売りに来たのであった。
過去に色んなおせっかいがいたが、あの自転車屋が断トツにおせっかいだった。
松井政就
'10. 5. 19
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県阿智村会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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