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Vol.422 猛暑の氷河期 〜リクルートスーツの学生たち〜
あまりの暑さに眠れず、エアコンを強くしていたら、ベランダに置いた鉢植えが枯れていた。 要するに置き場所が悪かったのだが、これも猛暑の被害者だろう。
昼過ぎ、山手線のドアが閉まろうとした瞬間、リクルートスーツ姿の大学生が2人飛び乗ってきた。
「あっついな!」一人が汗を拭きながら言った。
「・・・」
「暑いな」
「・・・」
「おい、暑いと言っているのに、何とか言えよ」
「俺が暑くしてるんじゃねーよ」
その通りだと思った。
「『弱冷房車』なんか廃止して、『強冷房車』にしてほしいな」
一人が車内をキョロキョロして言った。
「そう思うなら自分でJRに提案しろよ」
「どうして機嫌が悪いんだ?」
「暑いからだよ!」
二人はしばし沈黙した。
「それにしても、この暑さは何だ?! どこが就職氷河期なんだ!」
「ちょっと黙っててくれよ。余計に暑くなる」
他の乗客がニヤニヤしていた。
あの二人はきっとどこかに採用されるだろう。
ただし二人揃って採用が望ましい。
松井政就
'10. 7. 21
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。長野県阿智村会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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