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Vol.430 注文の決まらない女の子 〜旅行記はまだ完成しない〜
佐世保〜平戸〜対馬の旅（素晴らしかった(*^_^*)！）から帰り、旅行記を書こうとファミレスに来ていた。
すると斜め前の席に真っ黒に日焼けした女の子が二人やってきた。
バカに陽気で、どういうわけかラジオ体操の曲を口ずさんでいる。もしかすると、もの凄くお利口か、もの凄くその反対かどちらかだろうと興味を持った。
彼女らがメニューをめくり始めて少しすると、店員がやってきた。
「ご注文は？」
「すみませーん。まだ決まりませーん」
「では決まったらベルを鳴らしてください」
店員が去ると女の子はまたメニューを検討し始めた。
あーだこーだという声が聞こえてくる。かなりでかい声だ。ラジオ体操の曲はやめたようだ。
５分ほどして一人の子が呼び鈴を鳴らすと店員が来た。
「ご注文はお決まりですか？」
「まだなんです。この●●●って、×××ですか？」
「はい、そうです」
「じゃあ、他のにしよう。決まったらまた鳴らしまーす」
店員はまた立ち去った。
女の子は
「これは太る」
「これじゃすぐにお腹が減る」
「これだとお腹いっぱいになり過ぎる」
ぜんぜん注文が決まらない。
やがて向こう隣のオジサンが食べているものを指さし、
「あれって●●セットでしょ？」
「違うよ。××セットだよ。だってエビフライがあるじゃん」
「そーか。あの人、エビが好きなんだ〜」
声が大きいので全部聞こえてくる。
オジサンも食べにくそうだ。
ぼくもすっかり気が散って、どこまで原稿を書いたかわからなくなったので、そのまま女の子の様子を見ていることにした。
すると一人が
「あの人、こっちを見てるよ」
と、ぼくを指さした。もう一人も振り向いたので、女の子二人とバッチリ目が合ってしまった。
仕方ないのでVサインをすると、女の子は、何か悪い物でも見たかのように、急に目を逸らしていた。
こんなわけで、旅行記はまだ完成していない。
松井政就
'10. 9. 6
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松井政就（まつい・まさなり）
作家。長野県阿智村会地小学校早退。
主な作品：
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』（講談社プラスアルファ新書） ★『賭けに勝つ人 嵌（はま）る人』（集英社新書） ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ１億円以上！なぜ？』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』（以上、光文社） ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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