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Vol.462 来なかった大穴〜食い下がるオジサン〜
皐月賞は全く荒れなかった。
ぼくの狙った超穴馬も直線ですっかり力尽き、出番無しだった。
話に乗って買ってくれた人、悪かった。
ところで、昨日は久々に場外馬券売り場に行ったのだが、皐月賞がスタートすると、目の前の窓口でオジサンが大騒ぎしはじめた。
NHKの集金袋みたいなのを肩にかけたオジサンは、レースの最中だというのに、「馬券が違う!」と叫んだ。幾分、酔っているようだ。
係員が窓口に集まり、券をチェックするが、既に皐月賞はスタートしていて、今さらどうしようもない。というよりも、間違えたのはマークミスをしたオジサンのほうで、係員には何の責任もない。
「俺はこっちの馬を買ったんだ。券が間違っている! 取り替えろ!」
怒鳴り散らすその上のモニターで、皐月賞は第3コーナーを回った。
「あーあー、レースが終わっちまうじゃねえか! 早く取り替えろ!」
レース中だというのにぼくはオジサンが気になってしまい、モニターに目を戻した時にはレースは直線を向いていた。
坂を上がると、東京競馬場では走らないはずのオルフェーヴルがすごい脚で抜け出してきた。そこに1番人気のサダムパテックが追いすがる。この時点ですでに配当も安いことがわかっていた。大穴は諦めるしかなかった。 そのまま人気馬同士で決着。
「あーあ、終わっちまったじゃねえか!どうしてくれるんだ!」
「お客様、レースが終わってしまってはどうにも・・・」
「そんなこたぁ分かってるよ。でも取り替えろ!俺はこんなの買うつもりじゃなかったんだ。買おうとしてたのはな、こっちのなぁ、えーと、何だっけ、こっちの、えーと」
オジサンが競馬新聞を広げている間に、集まっていた係員は散っていった。
次のGTでは頑張りたい。
松井政就
'11. 4. 25
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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