|
Vol.480 芸術家のメッセージ
先日、芸術家のOさんから誘われパフォーマンスを見に行った。
会場となった渋谷の部屋では、4人の芸術家がそれぞれ別個に絵を描いたり得体の知れないものを作ったりしていたのだが、来場した観客は一様に眉間にシワを寄せていた。
理解できなかった(らしい)人は会場を去り、別の観客がまた現れるということが繰り返され、パフォーマンスが終了すると、評論家が言った。「このパフォーマンスは失敗です。何を言いたいのか全然わからない」
ちょっと待ったと手を挙げようと思ったら評論家がこう続けた。「4人がそれぞれ別のことをしていて、統一されたメッセージがない」
彼(評論家)は大事なことに気づいていなかったのだ。
4人の芸術家たちは、現実の社会を再現していたのだ。
人間が同じ空間にいても、それぞれ別の人間で、別の考えをもち、別の人生を歩んでいる。必要があれば関係するし、必要がなければ関係しない。それはまさに現実そのもので、それぞれ独立した存在なのだから統一されたメッセージなど自然には生まれはしないし、あれば意図的でしかない。
それを、言葉でなくパフォーマンスで見せてくれたのだが、何かを明快な言葉として与えられるのに慣れてしまった評論家には、それがわからなかったのだろう。
帰る途中で渋谷駅手前のナントカ公園の近くを通ると、ビルの隙間で猫が交尾していた。
松井政就
'11. 8. 31
|
|
松井政就(まつい・まさなり)
作家。会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
|
|
|