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Vol.502 多様性が面白さを生む
〜北欧映画祭にみた芸術性の源〜
先日、北欧映画祭(正式名「トーキョーノーザンライツフェスティバル」)が渋谷で行われた。北欧映画の名作を一挙に上映する映画祭だ。
戦前から現代のものまで様々なジャンルから集められた全14作品は、それぞれ異なるテーマを扱い、展開もエンディングも独特のもの。非常に満足するラインナップだった。
その中の一つに、犯罪心理を描いた「エレメント・オブ・クライム」とう作品があった。脚本もすばらしく、人間心理の盲点を突いた大変衝撃的な作品なのだが、残念ながら日本ではあまり知られていない。似た内容を扱ったハリウッド映画「羊たちの沈黙」が有名なのとは対照的だ。
その差を生んでいるのが資金力の差だ。
テレビCM等を見てもわかるように、宣伝する力も圧倒的なハリウッド作品はヒットになりやすい。しかし映画の内容も圧倒的かといえば、そういうわけではない。
北欧映画では、主人公が非業の死を遂げたり、観客が耐えられないような結末を迎えるものもある。思い通りにいかない現実を描くのが北欧映画の持ち味で、不死身のヒーローが結局最後は勝つことになるハリウッド映画とは、ひと味もふた味も違う。そうした独自性や多様性こそ、映画の面白さにとって欠かせないものだ。
多様性という点は競馬にも関係がある。
今の日本競馬は潤沢な資金力を背景にした社台グループに席巻されており、大半のGTを社台系列の馬が勝つ状況になっている。その戦いに敗れる形で名門メジロ牧場が廃業したのに続き、ウオッカやタニノギムレットを輩出したカントリー牧場も閉鎖が決まった。
ますます攻勢を強める社台グループ。もちろん弱肉強食の世界だから仕方がないが、いつも同じ勝負服が勝っていたのではファンも飽きるのではないかと心配だ。
松井政就
'12. 2.. 27
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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