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Vol.508 ダービーがやって来た
ついにダービーがやって来た。
最近はPATで買うことが増えた競馬だが、以前はG1ともなれば毎回のように競馬場まで脚を運んでいた。とくに90年代中盤は宗教人類学者で当時関西大学教授だった植島啓司さんと、ミヅマアートギャラリーの三潴末雄さんと3人つるんで、「こんなに競馬ばかりだと吐き気がするねえ〜」と言いながら、毎週競馬場に来ていた。
フサイチコンコルドが勝ったダービーの日。いつもの3人で1Rから馬券を買っていると、現れたのはデーブ・スペクター。今ではすっかり有名で、雲の上の人となっているが、当時はまだダジャレしかない時代。アメリカ時代から友達だった植島さんが連れてきたのだった。
当時のデーブはあまり競馬に詳しくなかったのだが、この日はちゃんと競馬新聞も持っていた。
デーブを加えて競馬は続行。午前中は1番人気が絶好調で、ぼくら3人はビシビシ当てていた。ところがデーブだけ全然当たらない。見ると変な馬券ばかり買っている。
「そんなデタラメ買ってちゃダメだよ。今日はカタイから新聞の印の通りに買えばいいよ」
「なるほどね」
デーブは新聞の言う通りに買うことにした。
午後のレースもさっそく本命サイドで決まり、やっとデーブも当たったと思いきや、またハズレ。
「おかしいな。今来た馬になんて全然印が付いてないよ」
「そんなわけないよ」
デーブから新聞を受け取ってみると、今の1,2着馬が二頭とも無印。その一方で関係ないような馬に印が並んでいる。変な新聞だと思いながらデーブに返そうとしたが、何か違和感を感じ、もう一度出走表を眺めて気づいた。
「あれ? この新聞、頭数が違うぞ」
「そんなことあるの?」
「あるわけないんだけど・・・」
そう言いながら新聞をひっくり返して仰天。
なんと「昨日の新聞」だったのだ。
今年もダービーがやって来た。
2012.5.20 松井政就
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。会地小学校早退。
主な作品:
★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。 作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
http://tjklab.jp/ |
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