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Vol.518 就職面接に来た男
そろそろ腹が減り、夕食をどうしようかと考えていたところに、糖尿病の部長から電話が来て、飲むことになった。
落ち合って乾杯すると、「さっき、ウチに就職したいというヤツが来たんだが、そいつがどうしようもないヤツでな……」
「どうしたんだ?」
「頭もきれいにセットして、ネクタイもセンスのいいのをしてるんだ」
「就職面接なんだから当たり前だよ」
「しかも、メガネなんかかけてやがる」
「たんに目が悪いだけだろ」
「それに、バカにやる気満々で威勢がいいんだ」
「いいことじゃないか」
「だから、ウチに来て何をしたいんだと聞いたんだ。そうしたら『何でもする』っていうんだよ」
「おや、そういうのに限ってロクなヤツじゃないんだ」
「だろう? だから、便所掃除もするかと聞いたんだ」
「何と答えた?」
「それは嫌だとさ」
「だろーな。お前んとこの便所、汚いからな」
「そういう問題じゃない。でも、何でもするって言ったじゃないかと突っ込んだら、仕事なら何でもするという意味だと言うんだ。だから便所掃除だって仕事だと言い返したら、便所掃除はウチじゃなくて業者の仕事だというんだ」
「どうでもいいけどさ、お前、そんなくだらない面接しているのか?」
2012. 10. 2 松井政就
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松井政就(まつい・まさなり)
作家。会地小学校早退。
雑誌記者、AVメーカーの事業プランナー、カジノプレイヤー、大学の講師、国会議員のスピーチライターなどの経歴をもつ。
・新聞・雑誌の連載に『競馬と国家と恋と嘘』(夕刊フジ)、『神と呼ばれた男たち』『パラダイスを探せ』『羅紗の女神』ほか。
・単行本に『賭けに勝つ人嵌る人』(集英社)『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社)『No.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』『経済特区沖縄から日本が変わる』『ディーラーホースを探せ』(光文社)『WHY
SHE IS SPECIAL?』『絶対に彼女には読ませたくない本』などがある。
http://tjklab.jp/ |
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