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松井政就の週刊日記 『よく遊び よく賭けろ』
Vol.

552 ソチ五輪フィギュア団体戦は日本にとって「落とし穴」

2月7日に開幕するソチ五輪。それに先立つ6日から「フィギュア団体戦」が行われる。

男女シングルの世界トップクラスが揃っている日本は、個人戦に加えてさらなるメダル獲得を期待する声が出ているが、現状を分析すると、団体戦は日本にとって落とし穴となる可能性が見えてくる。

ISUが発表した昨年12月時点の各国別ポイントは、1位カナダ(6053)、2位ロシア(5459)、3位アメリカ(5274)、日本はそれに次ぐ4 位(4062)。アメリカとの差は1000点以上。なぜこんなに大きな差が開いているかというと、日本はペアとアイスダンスの有力選手がいないからだ。

したがって、もし団体戦でのメダル狙うなら男女シングルで相当大きなリードを取らなければならないのだが、そこに大きな落とし穴が潜んでいる。男女シングルのエースを投入せざるを得なくなるからだ。

フィギュアスケートは過酷なスポーツで、十分に調整しないと怪我にもつながる。よって団体戦とはいえ、出る以上はきちんと体をつくらなければならない。しかしその数日後に「本番」の個人戦があるため、もし団体戦に出たとすれば、その直後から、疲労を回復させながら再びピークに戻すという厳しい条件に直面する。しかも男子は団体戦の後、一週間もおかずに個人戦に出なければならない。

某有力選手のコーチも「どこにピークを合わせるかが難しい」と語るように、個人戦だけにピークを合わせられる選手に比べ、団体戦出場はマイナスにはなっ てもプラスにはならない。そうした問題があるにもかかわらず、上位3チームとの実力差を考えずにエースを惜しみなく団体戦に投入するようなことがあれば想 定外の事態を招きかねない。

本来、個人の技術と演技力を競うのが目的のフィギュアスケートで、異種目の団体の合計点で勝ち負けを競うことには疑問を感じたため、ぼくはフィギュアの団体戦には当初から懐疑的だった。

しかも選手は「個人戦」でのメダル獲得に選手人生の全てをかけている。よって体調のピークも個人戦に合わせるのが当然。もし団体戦をやるとしても、先に個人戦を行い、余力で団体戦が争われるべきだ

だから今大会のように先に団体戦が行われるのは理解しがたく、今回の結果次第では、団体戦は次の平昌五輪からはスケジュールが後回しになるか、場合によっては種目から取り消される可能性まであるだろう。

2014. 1. 27






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