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 松井政就の週刊日記
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競馬の予想
VOL.584 日本の馬はなぜ凱旋門賞を勝てないのか?

競馬ファンはもちろんのこと、日本中のスポーツファンが固唾を飲んで見守った今年(2014年)の凱旋門賞。日本の3頭は5着にさえ入れない大惨敗に終わった。

凱旋門賞では一昨年、昨年とオルフェーヴルが挑戦して2着に健闘していただけに、最強馬を揃えた今回は期待された。

とりわけ3歳牝馬のハープスターには期待が集まった。決め手が現役ナンバーワンともいえる馬で、しかも3歳牝馬は斤量的にも有利だからだ。
また、ジャスタウェイはレイティングが世界ランキング1位。ゴールドシップもGT・5勝。タイプの異なる最強馬3頭は文字通り史上最強の布陣。

それが全く歯が立たず、子供扱いされる大惨敗。そのわけは
日本とフランスの競馬の違いにある。


日本の競馬はいわば「100m走」

日本の競馬はスピード主体といってよい。
それは競馬場の芝コースのコンディションにも現れている。

日本の芝コースは固く、スピードが出るように造成されている。しかも大レースの前になると芝を短く切りそろえる場合もあるなど、スピード優先の競馬であることは明らかだ。

いわば日本の競馬は100m競走のようなものだと思っていい。


フランス競馬は駆け引きのゲーム

それに対し、フランスのロンシャン競馬場は、コースそのものが起伏に富み、長くて深い芝に覆われ、クッションが利いている。日本の固い芝とは質が大きく異なっている。

以前、日本のジャパンカップ競走に出走するため来日したフランスの陣営が、東京競馬場の芝コースを確かめた際、固すぎて馬の故障が心配だと漏らしたことがある。日本とフランスの馬場がいかに異なるかを示すエピソードだ。

また、
フランスの競馬は「駆け引きのゲーム」だ。
「ラビット」と名付けられたペースメーカー専門の馬の存在が許されることもその一つの現れと言ってよい。

つまり、全ての馬がガチンコで勝負するのではなく、
特定の馬を勝たせるための共同作戦が存在するのがフランス競馬なのだ。

いわばフランスの競馬は「サッカー」に近いと言える。
サッカーとはスピードばかりあってもシュートが決まらなければ何の意味もなく、状況に合わせた「駆け引き」が要求される。


舞台設定が変わっても作戦を変えなかった日本陣営

ロンシャン競馬場は凱旋門賞の前になるとコースの内側の芝を保護するための仮柵が外されるため、内側ほどコンディションの良い芝を走ることができる。

従って、勝つためにはレース終盤まではできるだけ内側でじっと我慢し、体力のロスを最小限に抑え、最後の直線で瞬発力を爆発させることが必要だ。

トップレベルの馬と騎手が競うため、レース中のほんの僅かな位置取りの差や、駆け引きにおいてほんの一瞬後手を踏んだだけで、ゴール前は大差が付いてしまうのが凱旋門賞だ。

日本人はとかく「自分の力を全て出し切ることが大切」という考え方をしがちだが、その考え方は命取りだ。なぜなら、フランス競馬では、自分の力を出し切ることだけでなく、
「敵に力を発揮させないこと」が求められるからだ。


馬が強いだけでは勝てないのが凱旋門賞

今回の凱旋門賞で、日本馬はともに後方待機を強いられ、1頭は内側で包まれたまま終わり、2頭は馬群の外をブン回した。

それは日本人騎手の巧拙というよりもむしろ、フランス人騎手たちの巧妙な駆け引きによって、そのように、し向けられた結果だったと言えるだろう。

2014.10.6 松井政就

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松井政就(まつい まさなり)
作家。雑誌記者、AVメーカーのプランナー、国会議員のスピーチライターなどを経て現在に至る。
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