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松井政就の週刊日記 『よく遊び よく賭けろ』
Vol.621 魅力溢れるベトナム・ハノイ

ハノイに行ってきた。

西側の影響をかなり受けている南部ホーチミンに比べ、こちらは11世紀には首都タンロンが置かれるなど政治や文化の中心となってきた街。


ベトナム航空のクルーのみなさん


到着してまず感じるのは人々のパワーだ。

とりわけインパクトを受けるのがバイクに乗る人々。ハノイでの市民の交通はバイク。4人乗りは当たり前だ。




乗り方一つで恋人と夫婦は見分けられる。
運転する男性の背中に体をぎゅっとくっつけてしがみついているなら恋人。体を離しているなら夫婦だ。


恋人の二人乗り


夫婦の二人乗り


日本ではできない乗り方

これほど楽しくかっこいい乗り方はない。
何だか羨ましい。

チャンアンへ

ハノイから南へ約114キロのところにあるニンビン市。古都ホアルーの遺跡群、石灰岩の奇岩奇峰が連なるタムコックやチャンアンの景勝地など一帯が2014年6月にチャンアン景観複合体として世界遺産に登録された。

チャンアンで人気なのはボートツアーだ。まるで水墨画から抜け出たような地形の中をボートはゆっくり進む。


チャンアンを進む手漕ぎボート

ベトナム人学生グループと一緒になった。みんなベトナムのTシャツを着ている。校歌だろうか、歌を歌いながら彼らのボートが併走する。恐る恐るカメラを向けると笑顔でポーズを取ってくれた。


笑顔のベトナム人学生たち

ベトナムの学生も修学旅行で訪れる


まるで天国のよう

ボートが進む先には鍾乳洞が現れる。


鍾乳洞

体をかがめないと頭がぶつかる高さだ。冷たい滴が首筋に垂れる。手こぎボートは慎重に鍾乳洞を進み、抜けると突然、視界が開ける。


まるで天国のよう

それは2億4000年前に出来たとされるチャンアンのカルスト地形だ。水面には睡蓮の花が咲き、あたり一帯はまるで孫悟空でも現れそうな、奇っ怪なのに美しい岩山が連なる。

「もし天国があるとしたらこうした風景ではないか」と言いたくなるほどの光景だ。


結婚式用の撮影でも人気


古都ホアルーの遺跡

チャンアンと同じくニンビンに現存する古都ホアルーの遺跡。968年から1010年まで都が置かれていた。


過ごす間に固定観念が訂正される



静かな農村地帯が続く。


かつてここで戦争があった

ベトナムの藁葺き帽子「ノンラー」を被った人々が作業をしている姿を見ていて、ここがかつて戦場となったことを思い出した。

「ベトナム戦争」のことだが、突然、その呼び名に違和感を持った。この土地にアメリカ軍が攻め入ってきたのがいわゆるベトナム戦争だが、それをベトナムの人たちが「ベトナム戦争」と、自分たちの国の名で呼ぶわけがないと思ったのだ。

現地のガイドに尋ねると、やはりそれはあくまで西側の使っている呼び名であり、現地では「対アメリカ戦争」または「抗米戦争」という名前であると教えられた。

“海の桂林”ハロン湾

ハロン湾は1994年に世界遺産に登録されたベトナムで最も代表的な景勝地。
2000を越える大小様々な奇岩が海面から突き出ている様子は圧巻の一言。
中国の「桂林」を思い起こさせる


中国の「桂林」を思わせる

海から突き出る奇岩

TI TOPからの眺望

ハロン湾の観光はクルーズ船で行う。TUAN CHAU(トゥアン チャウ)港からオウコー号に乗る。船内はまるでホテル。揺れもほとんど感じず、部屋にいる時は船であることを忘れてしまう。


オウコー号


船内

ホテルのような客室

オウコー号https://www.aucocruises.com/)は2泊3日のスケジュールで航行され、乗客はオーストラリア、アメリカからをはじめ、シンガポール等のアジアの国からの人たち。日本人客も約10〜15%ほど

他に1泊2日コースで航行するバーヤ号もあるが、ハノイからせっかく4時間ほどかけてやって来るのだから、やはりオウコー号でゆったりとクルーズするのがオススメだ。


船からはカヤックに乗ることもできる


ブンビェン水上村

ブンビェン水上村では現在もタイとスズキ漁を行っている。昔は舟のまま暮らしていたが、今はタンクなどの上に家を乗せている。


カットバ島に上陸。自転車で奥に向かう。


あたりは田園風景


島の暮らしが見える


人々の日常の生活


自転車を降りてジャングル探


ジャングルの洞窟

ベトナム戦争時には防空壕として使われたという。

夜はデッキでバーベキューパーティ

この頃になると乗客はみなうち解けあっている。

ハロン湾の日の出


クルーズ船の旅は他国から来た乗客らとの2泊3日のいわば共同生活だ。一緒に行動するうち、知らなかった人たちがお互いに仲良くなり、やがてグループの垣根を越えて過ごすことになる。そして旅の終わりにはみなが手を取り合って別れを惜しみ、また会えるかどうかわからなくても「また会おう」と約束する。

再びハノイへ

ハノイに近づくにつれ、窓の外が田舎の風景から街の風景に変化していく。同時にバイクの量も増えていく。

農作業に向かう家族


ハノイに近づくにつれバイクが増える


ハノイの道ばたでは地元の女性がすごろくをやっていた。

すごろくに入れてもらった

面白そうなので「入れてくれ」と身振りでいうと、私を物珍しそうに見ながら、いいよとサイコロを渡された。結果は私の完敗。

ハノイに到着して間もない頃は、3人乗りや4人乗りといった物珍しさに目が行きがちだが、旅の終わりに近づくと、彼らが一つの景色としてもその土地に不可欠な存在であることに気づかされる。


ベトナムの面白さは人々の面白さ

ユネスコは観光客へのマナーとして「地元に暮らす人を見下してはならない」と従来から訴えている。これは世界遺産と呼ばれるものの多くがいわゆる発展途上国と言われる国々に多く存在し、一方、訪れるのは先進国からの観光客だからだ。

しかし私がここで申し上げる「人々の面白さ」とは、当然のことながら上から目線の話ではなく、むしろその逆の「羨ましさ」を意味している。

現地の人々が生き生きしていることへの羨ましさ
だ。

たとえばバイクに乗っている人々にカメラを向けると、中国であればたいてい文句を言われるし、日本でもおそらく拒否されるだろうが、ハノイではVサインで笑顔を見せてくれる。赤信号で止まっているバイクにカメラを向けると、嫌がるどころか笑顔を振りまいてくれる。

カメラを向けると笑顔を見せる人々

人が観光地に足を運ぶのは、その土地らしさを味わいたいからである。そのためには、その国らしさ、その土地らしさを本来のままにしておくことが重要なのは言うまでもないが、土地だけが保全されても実はその魅力は十分には発揮されない

ハノイを巡って感じるのは、その土地らしさの中でとくに不可欠なのは人々の姿であることがわかる。生き生きとした現地の人々が土地の魅力を最大限に引き出している。それは真の観光とは何かを教える力を持っているようにさえ見えた。

ベトナム北部は、島などで泳ぐ場合は夏がベストだが、11月から4月頃までは乾季で過ごしやすい。

【取材協力:ベトナム航空(http://www.vietnamairlines.com/ja/)】







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