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松井政就の週刊日記 『よく遊び よく賭けろ』
Vol.638

チケット高額転売が音楽やスポーツを滅ぼす




音楽やスポーツイベントが活発に行われる秋。人気歌手のコンサートや人気選手の出るフィギュアスケートの大会などではチケット争奪戦も激しくなっている。

音楽もスポーツもファンあってこそ成り立つため、一見すると業界にとってもうれしいことのように見られがちだが、その裏で業界を衰退させかねない深刻な問題が起きている。

チケットの高額転売だ。

人気のチケットが定価の5倍や10倍という不当な高額で転売されているのだ。こうした行為により、ファンが減り、業界にもお金が入らなくなり、音楽やスポーツそのものが衰退の危機に直面している。


チケット高額転売に反対する声明

<チケット高額転売に反対する声明 https://www.tenbai-no.jp/>

ネットにシフトしたことでダフ行為が急拡大

ダフ屋によるチケットの転売は以前からあったが、それらはいわばその筋のプロのダフ屋によるものだった。イベント会場付近で待機し、余ったチケットを買い取って転売するという人海戦術で行われていたのがこれまでの状況だった。

ところがインターネットの普及によってダフ行為が急拡大した。

ダフ行為の二層化

ダフ行為は二層化している。
一つは、ダフ屋がコンピューターを駆使して大量に抽選にエントリーし、チケットを大量に入手することが可能になった点だ。チケット業者のプログラムの弱点を突き、機械的に大量に確保する手法は現時点では防ぎ切れない。こうしたチケットがネットオークションなどに高額で出回ることになる。

ところが問題はそれだけに止まらない。ファンの一部が自らダフ行為に手を染め始めたのだ。

ダフ屋化する一部のファン

ネットオークションなどでチケットが高額で落札されるのを知った一部の悪質なファンがダフ屋と同じことをし始めた。

被害者であるはずファン自身がダフ行為をするとなれば事態は深刻だ。なぜならプロのダフ屋だけ取り締まっても問題が解決しないからだ。

こうした二層化により、ダフ行為はネット上でもはやブレーキが利かないほどの横行を見せている。

なぜダフ行為がいけないのか?

でもなぜダフ行為がいけないのか。
最も影響が大きいのは主催する業界へのダメージだ。

例えば5,000円のチケットをダフ屋が購入し5万円で転売したと仮定する。
ファンのAさんが5万円で買えば、チケット原価の5,000円を引いた差額の4万5,000円がダフ屋の儲けとなるが、この時点で主催者にはチケット代金の5,000円が渡っているので、一見すると損はないように見えるが、実は大変な損害が発生している。

本来であれば10回見に来られたAさんは、その代金をたった1回で失ってしまい、残る9回を見に来てもらえなくなってしまうからだ

Aさんが来られなくなれば別のBさんが買うからいいというわけではない。Aさんと同じことがBさんそしてCさんへと連鎖することで、ファンが減れば業界そのものが衰退してしまう

気づかないうちに問題に加担していることも

意図的にダフ行為をするのはもってのほかだが、中には、そんなつもりはないのに結果的にダフ行為を助長してしまう場合もある。

例えば一人で複数枚を申し込むケース
イベントに一緒に行く人が決まっていて、チケットの行き先が確定しているならその分の枚数を申し込むのは何の問題もない。

しかしもらい手のあてがないのに複数枚を申し込んだ場合、余ったチケットは往々にして転売される。その場合、定価ならいいかといえば必ずしもそうとは言えない。

なぜなら、余分な枚数を申し込んだことで抽選の競争率が上がり、本来買いたかった人に回らなくなってしまうからだ。

行きたいのに当たらなかった人はネットなどでチケットを探すことになり、悪くすればダフ屋から買ってしまうかもしれない。つまりチケット欲しさで悪気なくやっている行為がファン自身の首を締める結果となっているのだ。

ファン一人ひとりが本当に必要な枚数だけ申し込むようにすることも、ダフ被害を減らすためには大切だ。

ファンを守る取り組み


高額転売の問題に対して最近は幾つかの取り組みが行われている。

たとえばフィギュアスケートであれば、「フィギュアスケートチケット交換の部屋」というファン交流フォーラムがある。

ここは悪質な高額転売の被害に遭わないよう、定価以下厳守の譲り合いのサイトとなっている。あくまでファン救済を目的としているので、利益目的や悪用とみられる出品は削除し、頻繁に出品する人は大量購入の疑いがあるとして利用を制限するなど管理が厳しい。

業界を守る取り組み

業界も被害防止のために電子チケットの導入を始めている。

電子チケットでは登録の際にSMSによる認証を行うため、スマホ1台につき1つしかアカウントが取れず、ダフ屋が架空アカウントを作りにくくなったのが大きい。

また電子チケットでは転売防止の設定にしたり譲渡可能な場合も最後までその流通を追跡できるなど、不正がしにくいのが特徴だ。

業界内部から範を示すべき

チケット転売問題は古くからあり、大きなイベントでは一部の関係者によるチケット転売がしばしば問題になってきた。2020年東京五輪ではそうした問題が起きないよう祈るばかりだ。

関係者がチケットを大量に確保すれば、一般に出回る分はそれだけ減り、チケットの「プラチナ化」を招き、ダフ行為による高額転売に拍車を掛ける。

イベントでは関係者やスポンサーが営業用にチケットを確保するが、もしそれらを高額で転売したとなれば関係者自身がダフ屋になってしまう。

そんなことのないよう、業界内部から範を示すことも必要だろう。

2016.10.20 松井政就






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