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松井政就の週刊日記 『よく遊び よく賭けろ』 |
あらゆる調査が外れた理由
ありとあらゆる予想を覆し、大逆転でしかも地滑り的な勝利をあげたドナルド・トランプ。
政治専門家にとって想像すら出来なかったことは、テレビ中継に出演した人たちが開票されるごとに青ざめていったことからも想像がつく。
なぜこれほどまでに専門家やメディアの予想が外れたのか。
ひとつは、アメリカ特有の調査の盲点だ。
隠れトランプ支持者
事前の調査ではヒラリー支持者がトランプ支持者を大きく上回り、優勢は揺るぎないと言われていた。
ところが蓋を開けたら、調査結果とはかけ離れた数の票がトランプに投じられていた。
つまり「隠れトランプ支持者」が大勢いたのである。
記名式アンケートには本音を答えないアメリカ国民
アメリカはホンネとタテマエを使いわける国民性だ。出身や人種など異なる事情を抱えた多くの人々が暮らすアメリカ社会では、ホンネは騒動の元となりかねないからだ。
まして過激な発言で眉をひそめられているトランプ支持とわかってしまえばコミュニティでの居心地も悪くなりかねない。
よって回答者がわかる記名式調査では、トランプ支持であることを隠した可能性が高いといえる。
だが、本当の理由はほかにある。
ヒラリーの自滅
隠れトランプ支持者の存在だけではこの地滑り的勝利は説明できない。今回はヒラリー自身にこそ大きな問題があった。
ヒラリーは今回、大統領本選でも民主党の大統領候補者選びでも、日和見的な発言が多かった。ライバル候補の主張が人気を集めると、簡単に自分の意見も転換し、「風見鶏」「嘘つき」と揶揄された。
たとえばTPPだ。ヒラリーは推進派であるにもかかわらず、トランプがTPP反対で票を伸ばすと一転して反対に転じた。
そうした態度で信用を失ったのである。
テレビでの暴言合戦で潮目が変わった
もう一つがテレビ討論会での言動だ。
長年、国の政治に関わってきたヒラリーは、トランプにより政治経験が豊富なのだから、討論会でも淡々と政策を訴えれば大きな票に結びつくはずだった。
ところがヒラリーは時間の多くをトランプの非難に費やした。
トランプの暴言に応じ、ヒラリーは政策そっちのけで暴言合戦に参加した。それを見た支持者が失望したことは、討論番組をやる度に支持率が下がったことからも明らかであった。
トランプの女性蔑視発言などが問題になっていたにもかかわらず、ヒラリーの失敗により選挙戦の潮目が変わった。
ビジネスマンでありエンタテイナーでもあるトランプ
トランプは不動産会社オーナーとしてニューヨークで成功し、テレビの人気司会者としても活躍した。
ビジネスマンとしての彼の実績をみる限り、現実主義者であり、物事には是々非々で当たる人物と言える。
またエンターテイナーであることから、彼の過激な発言は一種のリップサービスであり、過激な発言といった「度が過ぎるやり方」こそ自分のスタイルであるとして意図的にやっていたと考えるべきだ。
よって彼の選挙戦での発言がそのまま全て実行されると判断するのは早計だ。
外国への影響は?
トランプ大統領の誕生について不安視する意見が外国にもあるがそれは、彼の次の言葉から取り越し苦労であると思わせる。
「アメリカは世界の警察をやめる」
トランプが大統領に就任したら、外国に派遣していた米軍を引き上げるなど、他国への介入から一定程度手を引くという。
これは悪いことではない。これまでのアメリカは、世界の警察を名乗って中東など他国に度々介入してきたが、その結果、イラクでは国家が崩壊し、軍部の残党がイスラム国となるなど、悪影響があったのも事実だ。
今後アメリカが、こうした「過介入」や「過干渉」を行わないという意味であれば、トランプの言う「アメリカは世界の警察をやめる」は歓迎すべき話である。
トランプの人物像についてはマスコミによって作り上げられた部分が多分にあるといわなくてはならない。
2016.11.9 松井政就
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