『神と呼ばれた男たち』 松井政就著 



 
『神と呼ばれた男たち』 第8章

 ハワード・シュワルツ  
ギャンブラーズ・ブッククラブ ダイレクター
  〜小宇宙の水先案内人〜


      (抜粋)

 人は特定の状況に身をおくと冷静さを失い適切な判断が出来ないことがある。それは決して思慮の浅い人ばかりとは限らない。世の中では時として頭が良いとされる人でさえ単純な論理性を失い、判断不能に陥り、誤った行動に出ることがある。それが濃縮されるのがギャンブルの世界である。
 

「土砂降りの雨に見舞われたとき何を考えますか? 靴の紐を結び直すべきか傘をさすべきかで悩んだりはしないでしょう。ところがギャンブルにおいて、人はそうした行動に出ることがあります。

 カジノは非常に高い論理性を必要とする遊びである。従って論理に背くような方法は端から論外である。その上、カジノゲーミングにはハウスエッジ(=カジノ側のマージン・控除)があるためハウス側に絶対的優位性がある。ルールに則ってゲームを続けていけば、最終的には必ず賭人(=プレイヤー)側は負ける運命にあるというわけだ。こうした事実を当然理解している人が、なぜか特定の情報に溺れ、無理な賭けや無謀な行動に出たりする。


「それは決して頭の悪い人の話ではありません。敢えてそう表現するならばIQが一八〇もあるような人でさえ、いとも簡単にそうした混乱に陥ったりするのです。彼らはいわゆる“頭が良い(ことになっている)人“ですが、ギャンブルでは皮肉にもこうした人が土砂降りの中で靴ひもを結ぶが如き愚を犯すのです。ギャンブルの持つ特性が、他の活動とは比較にならないほど人間から論理性を失わせるからでしょう」



 「カジノで大負けするような人は、新聞配達の少年にあげる一ドルのチップすら惜しむ人と精神構造が似ていると感じます。世の東西問わず、富を手に入れる人とそうでない人を分けるのは、こうした些細な違いのように思えてなりません」



 (全文は本誌にてご覧ください)

松井政就(まつい まさなり)
1966年長野県生まれ。飯田高等学校、中央大学法学部卒。宝くじ地震研究所所長。作家。作品作りの傍ら自らもカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師等を務める。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書)『経済特区・沖縄から日本が変わる』(光文社)『ディーラーホースを探せ』(光文社)等。

 
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