『神と呼ばれた男たち』 松井政就著
                        

 長い間、遠い外国の話のように語られてきたカジノ。そこはかつて、数々の事件の舞台となり、犯罪の巣窟あるいはマフィアの城と言われた場所である。今や時代は変わり、カジノを取り巻く黒い影は消し去られ、そこは健全な社交場となった。しかしスクリーンなどから危険なイメージを植え付けられてきた日本人にとって、カジノとは、やはり足を踏み入れることさえ躊躇する存在であった。ところがそんな時代に、本場カジノのボスをしていた日本人がいた。

 『神と呼ばれた男たち』  第一章 

  松永登史 〜南
半球最大のカジノを手にした男〜

                                             松井政就著

              
(抜粋)


 インド洋に面したオーストラリア西海岸の街パース(PERTH)。スワン川を取り囲むこの街は、ウエスタンオーストラリア州の中心都市だ。「世界で一番綺麗な街」と兼高かおるに言わせたこの一帯は空気の透明度が高く、訪れた誰もが感嘆の声を漏らすリゾートだ。その街の一角にオーストラリアを代表するカジノ「バーズウッドカジノBurswood Casino」がある。417室を擁し、90年代当時で南半球最大の規模を誇ったこのカジノを7年に渡って経営したのが松永登史氏である。


 「カジノを成功させるには数々の緻密なノウハウが必要です。異なるターゲットへのマーケティングをはじめ、課税の仕組み、そしてゲームのオペレーションに至る高度なノウハウの裏付けがあってはじめてカジノは成功するのです」と彼は語る。

“顧客ミックス”は、そのカジノの置かれた環境を生かしてコンセプトを構築することが必要です」

 

 カジノとは非日常の極致である。ダイスの目もカードの数字も誰にも予測不能だ。いわばカジノは未知と不確実性が凝縮された空間である。世界中から、その魅力のとりこになった人間たちがやってくる。その不確実性の闘いの中で、時に彼らはディーラーを聖なるものとし、カジノで起きる現象を超自然的な存在とみなす。それが極まる時、カジノを支配する人間は、彼らにとって神の如き存在となる。

(全文は本誌にてご覧ください)


松井政就(まつい まさなり)
1966年長野県生まれ。飯田高等学校、中央大学法学部卒。宝くじ地震研究所所長。作家。作品作りの傍ら自らもカジノプレイヤーとして海外を巡る。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書)『経済特区・沖縄から日本が変わる』(光文社)『ディーラーホースを探せ』(光文社)等。


 
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