『神と呼ばれた男たち』 松井政就著 



 
『神と呼ばれた男たち』 第9章

 森巣博 〜真理は色褪せない〜

 世には様々な博奕小説が存在し、優れた作品が溢れている。その多くが繰り広げる奇想天外な世界が、博奕をテーマにしたいわゆるファンタジーであることは、深く長くその世界を覗いてきた人間であれば容易に判別がつくことである。

ここではその是非を問うことが趣旨ではない。作品が一つのエンターテインメントとしての役割を果たしていれば良いわけであるし、それが読み物である限り、脚色したり回避せねばならない表現があることも当然だからだ。

ところがその中で最も特異な世界を描き出している一つの作品群が、実は「真実の物語」であったとするならば、それは単にその作品群の特徴といった定義では収まり切らない別の意味も持ちうるのではないだろうか。つまり、想像や創作で書かれた他の作品にとって、それは容易に越えざる壁となるからだ。

森巣博の作品は「ファクト(=事実)」を第一義とし、そこに「フィクション」を重ね合わせた『ファクション(c森巣博)』というスタイルで書かれている。それは出来るだけ博奕の真実を伝えたいという意図から出ているものである。それが紡ぎ出す物語は、博奕を知らない者に対してはもちろんのこと、博奕を深く追い求めてきた者にもその深淵を覗かせる。

 「神と呼ばれても困るんですけどね」と彼は苦笑する。

彼の作品の中には、度々ドキドキさせられる表現が飛び出してくるが、作者本人はとにかく柔らかい物腰の紳士である。話の間も常に相手を気遣う。だが実物がそのような人物だからこそ、作品の中で獰猛なまでの主人公を演じ、過酷な現実を描き切ることが出来るのかもしれない。


 (全文は本誌にてご覧ください)


松井政就(まつい まさなり)
作品作りの傍ら自らもカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師等を務める。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書)『経済特区・沖縄から日本が変わる』(光文社)『ディーラーホースを探せ』(光文社)等。

 
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