『神と呼ばれた男たち』 松井政就著 



 
『神と呼ばれた男たち』 第7章

 大川慶次郎 〜競馬の神様と人は呼んだ〜



 昭和から平成にわたり競馬評論家として人気を博した大川慶次郎がこの世を去ったのは、二〇〇〇年まであと十日を残した九九年十二月二一日であった。翌日の新聞各紙には揃って「競馬の神様、天国へ」という文字が鎮座していた。競馬ファンはもとより、そうでない人までがその存在を知っていた競馬の神様は、永遠にその姿を見せることがなくなった。

 競馬の歴史をふり返ると、それが日本におけるギャンブル蔑視思想との闘いの歴史であったことがわかる。競馬が、その冷遇時代から発展とバブル時代、そして成熟して現代に至るまで、いかに時代の波に飲まれ、いかに時の権力に翻弄されてきたかが浮き彫りにされる。別の言い方をすれば、競馬はその取り扱われ方や論議のされ方を通して、日本社会の非論理性と非成熟性を映す鏡としての役割を演じてきたとも言える。
 今や日本の競馬は諸外国に比類無いほど発展し、売り上げ規模、ファン層の厚さ共に他国を圧倒するようになった。だがそうした成功も、大川慶次郎の多大な貢献によるものであることは殆ど否定する人がいない。

 六一年九月のパーフェクトを契機に大川理論は一躍脚光を浴び、競馬は単なる博奕から論理的に推理可能な競技として脱皮していったのである。大川が狙ったパラダイムシフトは劇的に成し遂げられた。

 (全文は本誌にてご覧ください)


松井政就(まつい まさなり)
1966年長野県生まれ。飯田高等学校、中央大学法学部卒。宝くじ地震研究所所長。作家。作品作りの傍ら自らもカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師等を務める。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書)『経済特区・沖縄から日本が変わる』(光文社)『ディーラーホースを探せ』(光文社)等。

 
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