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                  | Vol.302 誰もいない落語会 〜期待されすぎるとツライ〜 
 
 先日道を歩いていると、落語会の看板が目に入ったので、扉を押して入ってみた。その瞬間に「しまった!」と思った。他に誰も客がいなかったのだ。
 だれの会かは黙っておくが、一人だけの客ほど恐ろしいことはない。一刻も早く逃げたいと思う一方、落語家にとっては期待の星だ。この客を帰してなるものかと思うからだ。自分がその状況に置かれたことに気づいた時はすでに手遅れで「お客さん、前へどうぞ」と手招きされていた。
 
 しかたない。毒を喰らわば皿までだ。そう覚悟して一番前の席に座り、この落語家が面白いことを必死で願った。
 
 その願いはもろくも崩れた。
 ツマラナイわけではない。やる気がありすぎるのだ。それまで客席が空っぽで溜まっていたパワーを一気に放出するようなド迫力なのだ。そのド迫力のせいで、悲しむ場面が大立ち回りに聞こえてきた。しかも客はぼくだけである。その全てのパワーがぼくだけに向けられた。ついに怖れた状況だ。こんなプレッシャーにはぼくは勝てない。やがてぼくは気が遠くなっていった。
 
 さて中日新聞杯。
 連勝中のオペラブラーボがみんなの期待を一身に集めている。谷間の時期によく出てくれた期待の星というわけだが、そのツラさはわかる気がする。真正面に座らされ、ウケることを期待されたようなものだ。これはツライ。
 
 ぼくの新しい実験も同じである。誰もが来ると思っている馬は最初から除外している。当たったって低配当では勝負する意味がないからだ。やはり、目立たぬようにゲートインし、走りたい時だけ走る馬。そんな馬だけを狙えばいい。
 
 今回は福島記念と同じく◎マンハッタンスカイが新しい実験条件に該当した。走ってくれるか注目だ。
 
 
 松井政就
 '08.12.13
 
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                  |  | 松井政就(まつい・まさなり)  作家。中央大学早退。主な作品『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書)  『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』  『経済特区・沖縄から日本が変わる』  『ディーラーホースを探せ』(光文社)  『神と呼ばれた男たち』等。作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスコンサルタント、大学講師などを務める。 http://tjklab.jp/
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