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                  | Vol.425 悪臭騒ぎ 〜衝撃のレンタルふとん〜 
 
 ウチにお客さんが泊まっていくことになり、大手寝具メーカーからレンタルふとんを届けてもらった。
 
 ところが袋を開けた途端、この世のものとは思えないひどい悪臭が噴出した。まるで生ゴミ回収車と田舎のボットン便所の汚物回収車が正面衝突して、2台とも横転大破したらこんな臭いじゃないかと思われるほどの悪臭がしたのだ。
 
 たまらず、大きなポリ袋をかぶせて臭いが漏れないようにし、業者に電話すると、係員が代わりのふとんを運んできた。
 
 「臭いふとんというのはどれですか?」
 係員はまだコトの深刻さに気づいていない。
 「とにかく、この臭いをかいでみてくれ」 ぼくはポリ袋を開けてみせた。
 「うぐっ!? 何だこりゃ!?」
 係員は顔を歪め、客の前では絶対にしないような顔をした。
 
 「その臭い、どう思う?」
 「ひどいっス」 係員は鼻をつまんだ。
 「だろーう?」
 「信じられない臭いっス! 何スか?この臭い。 今、代わりのものをお持ちします」
 
 この時点ではまだ係員の顔には余裕があった。
 彼は配達車から別のふとんを持ってきて、袋を開けた。
 
 プ〜ン。
 
 またしてもひどい異臭が漂った。
 
 「おんなじじゃないか。どうなってるんだ?」
 係員の表情が曇った。
 「そんなわけないっス。他にまだ積んでいますので持ってきます」
 
 係員は3組目のふとんの袋を開けた。
 
 プ〜ン。
 
 係員は青ざめた。「こんなこと信じられないっス」
 「あり得ないよナ?」
 「あり得ねえっス。あのう、実はもうひと組、車に積んであるんで、一応それも試してみていいっスか?」
 「好きにしてくれ」
 
 車に取って返す時の係員の足取りは重かった。
 彼は4組目のふとんを運んできて袋を開けた。
 
 袋のチャックを開ける時、まるで男子の大事なところが引っかかったズボンのチャックを、目を瞑って思い切り開ける時のような顔つきだった。
 
 いよいよ袋が開いた。
 
 プ〜ン。
 
 係員は血相を変えた。
 「完全にヤバいっス! 社長を謝りに来させます!」
 「いいよ、社長なんて来られたって困る」
 「でも、これじゃ申し訳ないっス! やっぱ、社長を謝りに来させます!」
 「社長、社長って、キミにそんな権限なんかないだろ? そんなことより、早くまともなふとんを持ってきてくれよ。お客さんが来ちゃうじゃないか」
 
 係員は4組の臭いふとんを配達車に乗せ、
 「これから倉庫に戻って、臭くないかちゃんとジブンが確認してから持ってきます」
 と鼻を指さして帰っていった。
 
 
 松井政就
 '10. 8. 2
 
 
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                  |  | 松井政就(まつい・まさなり) 作家。長野県阿智村会地小学校早退。
 主な作品:
 ★『ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている』(講談社プラスアルファ新書) ★『賭けに勝つ人 嵌(はま)る人』(集英社新書) ★ 『NO.1販売員は全員フツーの人でした。でも、売上げ1億円以上!なぜ?』 ★『ディーラーホースを探せ』 ★『経済特区・沖縄から日本が変わる』(以上、光文社) ★『神と呼ばれた男たち』等。  作品作りの傍らカジノプレイヤーとして海外を巡るほか、ビジネスアドバイザー、大学での講師などもたまに務める。
 http://tjklab.jp/
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